kyuugoshirae’s diary

読んだもの見たものなどについて

入江喜和『ゆりあ先生の赤い糸』

ここ数ヶ月の間に一番衝撃を受けたのは『ゆりあ先生の赤い糸』という漫画で、「とりあえず読んでください」としか言えない。というのも文章で内容を書いたところで全く伝わらないからだ。

主人公の「ゆりあ先生」は夫とその母と暮らしており、突然倒れた夫の自宅介護をすることになり更に夫の様々な人間関係をゆりあ先生が背負う羽目になりどうにか乗り越えようと奮闘する……

あらすじを書いてみたがこれは作中の出来事の羅列にすぎない。

作中でおこる出来事たちは素っ頓狂なのだが読んでいるとなんとなく受け入れてしまう。それよりも感情の動きや人間の思惑の絡まりや疲労感や湿度や匂いや臭いまで伝わる表現がこの作品の凄さだと思う。これは文章に書き表すことができない。

壮絶なストーリーのはずなのに重々しく感じない。ヘヴィなトピックが多いがどんどん読んでしまう。衝撃や残るものが多く、こんな作品を描く人は衣食住その他の日常生活と創作とを両立し得るのかと思ってしまう。それくらい読んでいて揺り動かされる作品だ。

作者の入江喜和先生は『宮本から君へ』『ザ・ワールド・イズ・マイン』などの新井英樹先生とご夫婦だそうで、新井英樹先生のあの作風も相まってどんな関係性なんだろうかと考えてしまう。二人とも長く描き続けている同士でお互い唯一無二の強い作家性を持っているから、生活から作品にもたらされるものがあるのだろうか。天才同士の関係性に一読者がどうこう邪推したところで何がわかるわけでもないが、それでも邪推したくなる。

ameblo.jp

ご本人のブログを読むと山岸凉子先生シンパ(ファンとか尊敬してるとかそういう言葉のくくりではないと思う。信者というのもしっくりこないので暫定的にシンパと書いた)のようで、そりゃこんな作品描きますわと納得する。単に私が山岸凉子原理主義者みたいなもんだから過度に「山岸凉子に影響された人らしさ」を感じるのかもしれないが…。

  『ゆりあ先生と赤い糸』は連載中なのでまだまだ追えるし、作者の過去作品も多く、この作者の作品をすべて読みたいと思う。長く描いていた人なのに知らずに生きてきた自分は何をしてたのかと思う。もっと早くから読んでいたかった。

 

追記

週刊はてなブログでこちらのpostに言及していただきました。ありがとうございます。

先日ついに完結した『ゆりあ先生の赤い糸』について書きました。